過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

「じゃあ、まず聴診しますね」

神崎は椅子に座ったまま、ローラーで静かに雪乃に近づいた。

距離感を自然に保ちつつ、診察のための最適な位置へ滑らせる。

看護師がそっとシャツの前を開けるのを手伝い、神崎は聴診器を耳に装着すると、まずは手で冷たさを和らげてからそっと肌に当てた。

胸の前側、左胸部を中心に、前後ろと慎重に聴診していく。

雪乃は椅子に座りながら、淡々と前方の壁を見つめ、神崎の手つきや声の抑揚に細心の注意を払った。

(こんなに丁寧に診てくれるなんて……でも、やっぱり緊張する)

神崎は静かな口調で、

「少し収縮期雑音が聞こえます。呼吸に合わせて変化はないですね」

と所見を簡潔に伝えた。

まるで初めて聴く患者のように淡々と、しかし確実な観察を示す口調だった。

「これから心電図と心エコー、血液検査も行います」

神崎が告げると、看護師がすぐにオーダーを入力するために後ろに下がった。

雪乃は、検査を受ける不安と同時に、神崎の手元を見つめながらどこか救われるような感覚を覚えた。

(きちんと向き合ってくれてる……)

その思いが少しだけ胸を軽くしていた。