過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

翌朝。
わずかに残るだるさを押しのけるようにして、雪乃はゆっくりと体を起こした。
空気が少し重たい。それでも、今日は休めない。

熱めのシャワーを浴びて、心と身体を目覚めさせる。
鏡の中の自分にそっと触れながら、肌の調子や目の下のクマに目をやった。
昨夜の出来事が、まだ皮膚の奥に残っている気がした。

朝食は、ご飯と目玉焼きだけ。
シンプルだけれど、温かい白米に醤油をひとたらし。
それだけで少しだけ、心が落ち着いた。
黄身を崩して、少しだけ夢中になって食べた。

スマホを見ると、早朝に神崎からのメッセージが届いていた。

「10時に【聖南医科大学附属病院】、予約確定しました。正面入口から内科外来へ、受付で僕の名前を出してください」

「了解です」
打ち込んだ返信に、しばらく既読はつかなかった。

診察しやすいように、前開きのボタンシャツを選ぶ。
手持ちの中でもカジュアルで柔らかい素材のもの。

ウエストを締めつけないラフなパンツに合わせて、いつもよりずっと軽めのメイクを施した。

肌色の補正を少しだけ、そして血色のために薄い桃色のリップをひく。

鏡の前に立った自分は、普段の夜の顔とは違って見えた。
まるで――「普通の女の子」みたいに。

バッグにスマホを入れて、深呼吸をひとつ。
病院へ向かう準備が、整った。