スマホの電話帳には、神崎の名前がちゃんと登録されている。
“神崎先生”──それだけで、少し背筋が伸びるような気がする。
けれど、不思議と何もやりとりはしていない。
あの日、家を出たきり、神崎はお店にも来ていない。
もちろん、他の女の子の卓についているところも、一度も見たことがない。
あれは、ただの偶然だったのか。
それとも──
化粧ポーチの中に、あの日受け取ったメモをそっとしまっている。
もう必要はないかもしれないけれど、なぜか手放せなかった。
電話番号が書かれた紙は、小さく丁寧に折り畳まれて、ファンデーションの横に収まっている。
お守りみたいなものだ。
それをひと目見るだけで、不思議と気持ちが和らいでいく。
「この人がいるから大丈夫。」
根拠なんてなくても、そう思えるだけで救われる瞬間がある。
あの日、先輩医師に連れられて、いやいや来たと言っていた。
初回の席にたまたま私がついた。
酒も飲まない、話もしない、不機嫌そうな客。
だけど──あの出会いがすべての始まりだった。
運が良かったのかもしれない。
もしかしたら、運命だったのかもしれない。
“神崎先生”──それだけで、少し背筋が伸びるような気がする。
けれど、不思議と何もやりとりはしていない。
あの日、家を出たきり、神崎はお店にも来ていない。
もちろん、他の女の子の卓についているところも、一度も見たことがない。
あれは、ただの偶然だったのか。
それとも──
化粧ポーチの中に、あの日受け取ったメモをそっとしまっている。
もう必要はないかもしれないけれど、なぜか手放せなかった。
電話番号が書かれた紙は、小さく丁寧に折り畳まれて、ファンデーションの横に収まっている。
お守りみたいなものだ。
それをひと目見るだけで、不思議と気持ちが和らいでいく。
「この人がいるから大丈夫。」
根拠なんてなくても、そう思えるだけで救われる瞬間がある。
あの日、先輩医師に連れられて、いやいや来たと言っていた。
初回の席にたまたま私がついた。
酒も飲まない、話もしない、不機嫌そうな客。
だけど──あの出会いがすべての始まりだった。
運が良かったのかもしれない。
もしかしたら、運命だったのかもしれない。



