昼下がりの光が、惣菜の並ぶガラスケースをあたたかく照らしていた。
チキン南蛮、卵焼き、ひじき煮──どれも手作りの家庭の味。
「はい、唐揚げ弁当、お待たせしました!」
白いエプロンを軽やかになびかせながら、雪乃は笑顔でお客に弁当を手渡す。
小さなレジカウンターの向こうには、腰の曲がったおばあさんが優しい目で見守っていた。
「雪乃ちゃん、ほんとに助かってるわ。手も早いし、元気もらえるわよ」
「いえいえ、こちらこそ。なんか、こういうの……落ち着くんです」
ふと、窓の外に目をやる。
ゆるやかに流れる商店街の時間。
夜の店とはまったく違う、人の気配。
この空気に、少しずつ自分の心が馴染んでいくのを感じていた。
──夜だけじゃ、足りない。
もっと自分の未来のために、ちゃんと稼がなきゃ。
治療を諦めないって決めたから。
神崎の言葉が何度も胸の奥で反響していた。
「どうしたい?」と聞かれた夜のこと。
あの時の自分の、震えるような小さな決意。
本当はまだ怖い。
病院も、検査も、未来も──ぜんぶが。
でも、動かなきゃ始まらない。
現実は思ったよりも残酷で、治療費は高く、時間も限られている。
それでも、少しずつでも稼げば届くかもしれない。
「お弁当2つ、お願いしまーす!」
「はーい!」
雪乃はすぐに手を動かしながら、自分の中の小さな勇気を確認するように心の中で呟いた。
──病気から逃げないって、決めたんだ。
──誰かに守ってもらうんじゃなく、自分で生きていくんだ。
エプロンに付いた少しのソースをぬぐい、また笑顔で接客に戻る。
そう、ちゃんと向き合っている。
今の自分は。
チキン南蛮、卵焼き、ひじき煮──どれも手作りの家庭の味。
「はい、唐揚げ弁当、お待たせしました!」
白いエプロンを軽やかになびかせながら、雪乃は笑顔でお客に弁当を手渡す。
小さなレジカウンターの向こうには、腰の曲がったおばあさんが優しい目で見守っていた。
「雪乃ちゃん、ほんとに助かってるわ。手も早いし、元気もらえるわよ」
「いえいえ、こちらこそ。なんか、こういうの……落ち着くんです」
ふと、窓の外に目をやる。
ゆるやかに流れる商店街の時間。
夜の店とはまったく違う、人の気配。
この空気に、少しずつ自分の心が馴染んでいくのを感じていた。
──夜だけじゃ、足りない。
もっと自分の未来のために、ちゃんと稼がなきゃ。
治療を諦めないって決めたから。
神崎の言葉が何度も胸の奥で反響していた。
「どうしたい?」と聞かれた夜のこと。
あの時の自分の、震えるような小さな決意。
本当はまだ怖い。
病院も、検査も、未来も──ぜんぶが。
でも、動かなきゃ始まらない。
現実は思ったよりも残酷で、治療費は高く、時間も限られている。
それでも、少しずつでも稼げば届くかもしれない。
「お弁当2つ、お願いしまーす!」
「はーい!」
雪乃はすぐに手を動かしながら、自分の中の小さな勇気を確認するように心の中で呟いた。
──病気から逃げないって、決めたんだ。
──誰かに守ってもらうんじゃなく、自分で生きていくんだ。
エプロンに付いた少しのソースをぬぐい、また笑顔で接客に戻る。
そう、ちゃんと向き合っている。
今の自分は。



