過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

「おい、大丈夫か」

聞き覚えのある声に、ぼんやりとしていた意識が一瞬だけ鋭くなる。

顔を上げると、そこには帰ったはずの神崎が立っていた。

「なんで…?」

声にならない問いかけに、神崎は呆れたように言った。

「やっぱりな、持つわけがない。」

そう言うと、スマホを取り出して救急車を呼ぼうと手を伸ばす。

けれど、雪乃は必死に体を起こし、強い気迫を込めて叫んだ。

「だめ!救急車はだめ!」

その強い意思に、神崎は眉をひそめ、手を止めた。

「なぜだめなんだ?」

答えられずにいる雪乃をよそに、再びシャッターに背を預けようとした瞬間、神崎が背中を自分の方へ引き寄せる。

自然な仕草で、その手が雪乃の手首を掴んだ。

胸が締め付けられ、息苦しさが増していく中、雪乃は小さな声で切れ切れに絞り出した。

「保険…ないから…お金かかっちゃう…」

胸の上下は止まらず、痛みにどう対処すればいいかわからない。

神崎はそんな雪乃の様子を見て、静かに告げた。

「タクシーで一旦家まで送るから。」

その言葉に、雪乃は複雑な思いを抱きながらも、無意識にうなずいた。

二人は一緒にタクシーに乗り込む。

心の中では、救急車ではない、誰にも知られずに帰れる、この状況がせめてもの救いだった。

だけど、それでも…不安が胸を締め付けて離さなかった。

「これで本当に大丈夫なのか」
「まだ誰にも助けを求められない自分は、どこまで耐えられるんだろう」

そんな思いが渦巻きながら、雪乃は薄れていく意識の中で、必死に現実を繋ぎとめていた。