過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

「とにかく、早くうちに来い。担当医を指名して予約も入れられる。」

神崎の声は、いつになく真剣で優しかった。

雪乃は首を横に振る。

「結構です。」

その言葉に神崎は驚いたように見えたが、

「なぜ治さない? 検査だけなら……」

そう言いかけた瞬間、雪乃は言葉を遮って言った。

「大丈夫です。自分でちゃんと受診しますから。」

その言葉は、その場しのぎの嘘だと、自分でも分かっていた。

けれど、神崎に素直になれなかった。

彼の申し出が、どれだけ真剣なものか知っていながら、

心の奥底では、甘えを許せない自分がいた。

神崎は静かに、少し残念そうに「そうか。」と言って、自分の名刺と

タクシーで帰れと1万円をテーブルにそっと置いた。

そして立ち去った。

雪乃はその背中を見送りながら、気づいた。

あの人は、ただ接待を受けるために来たんじゃない。

私を病院に行かせるために、指名までしてくれたのだと。

胸が締め付けられるように痛んだ。

だけど、素直になれない自分が、悔しくて、もどかしくて、
一人、深く息をついた。

誰かに頼ることの怖さと、その温かさに戸惑いながら、雪乃は心の中で静かに誓った。

――いつか、自分から歩き出す日が来ると。