スプーンを口に運んでもらうたび、雪乃は目を細めて小さく笑った。
けれど、ふと我に返るように視線を逸らし、頬を指で軽く押さえる。

「……なんか、恥ずかしいかも……」

大雅がクスッと笑った。

「自分からお願いしておいて、今さら?」

「う、うん……そうなんだけど……」
雪乃はますます赤くなって、テーブルの端を見つめる。

「だって……こんなの、子どもみたいだし……
大雅さん、きっと内心で“かわいいやつだな”って思ってるんでしょ……」

「うん、思ってる」
即答だった。

「っ……! やっぱりぃ……!」
雪乃は両手で顔を隠した。

「でも、それのどこが恥ずかしいの?」
大雅はその手をそっと外し、雪乃の頬に優しく触れた。

「君がかわいいのは、前からずっとだよ。」

そう言って、額にふわりとキスを落とす。

雪乃はしばらくの間、黙ったまま大雅の胸元にそっと額を寄せた。
「……なんかもう……ずるい……」

「ずるくないよ、愛情表現だもん」

「それも……またずるい……」

照れと嬉しさが入り混じる声は、か細くて、大雅だけが拾える音だった。

彼女の背に手を回し、そっと抱き寄せる。

「じゃあ今夜は、恥ずかしくなくなるくらい、たくさん甘えさせてあげる」

「……じゃあ、恥ずかしくなくなるまで、ずっと、よろしくお願いします……」