雪乃が病室に戻ると、ベッドには新しいシーツが整えられており、窓のカーテンからは柔らかな午後の光が差し込んでいた。
ゆっくりとベッドに腰を下ろし、遠藤が水を用意してくれる。
「今日のリハビリ、がんばりましたね。初日としては完璧。これなら回復も早いかも」
「ありがとうございます……少し疲れましたけど、でも、嬉しいです」
雪乃がそう言って水を飲み終えたそのとき――
病室のドアが静かに開いた。
「あら、噂をすれば」
遠藤が振り返ると、そこには白衣姿の神崎が立っていた。穏やかな目元に、どこか安心したような笑みを浮かべて。
「お疲れ。歩行練習、うまくいったって聞いた」
「……うん、少しだけど、歩けたよ」
雪乃が少し照れたように答えると、神崎はベッドの脇に近づき、そっと彼女の頭に手を置いた。
「よく頑張ったな。偉い」
そのまま優しく髪を撫でながら、ひざまずくようにして目線を合わせる。
「無理してないか? どこか痛いとこない?」
「大丈夫、疲れただけ。先生が来てくれて……ほっとした」
二人のやりとりを見ていた遠藤が、あきれたように笑う。
「……先生、暇なんですか? またこんな時間に来て」
神崎はその言葉に一瞬だけ目を細めたが、すぐに余裕の笑みを浮かべて答えた。
「暇を“作ってる”だけですよ。彼女のために」
その言葉に、雪乃の顔が一気に赤く染まる。
遠藤は盛大に吹き出した。
「うわ、堂々としてるな〜! そんなこと、患者の前で言う医者初めて見たかも」
「……患者じゃなくて、“彼女”だからね」
と、神崎がさらに畳みかけるように言いながら、雪乃の頬に指先で触れる。
そして何のためらいもなく、額にそっとキスを落とした。
「本当に……よく頑張った」
「……先生、恥ずかしいから……遠藤さんが……」
雪乃が小声で抗議するが、遠藤はにやにやが止まらない。
「いや〜、これはもう病棟の癒しコンビだね。これから毎日見守らせてもらおうかな」
「それだけはやめてください」
神崎が呆れたように肩をすくめると、遠藤はにっこり笑って病室を出ていった。
二人きりになった空間で、神崎は雪乃の手を取り、優しく握る。
「……ちゃんと眠れてる? 疲れすぎてないか?」
「先生が来てくれると、安心する。ずっといてほしいくらい……」
「じゃあ、いられる限り、いる。雪乃がそう言うなら」
その声は穏やかで、どこまでも深い。
午後の光に包まれながら、雪乃の心もまた、神崎の優しさに包まれていった。
ゆっくりとベッドに腰を下ろし、遠藤が水を用意してくれる。
「今日のリハビリ、がんばりましたね。初日としては完璧。これなら回復も早いかも」
「ありがとうございます……少し疲れましたけど、でも、嬉しいです」
雪乃がそう言って水を飲み終えたそのとき――
病室のドアが静かに開いた。
「あら、噂をすれば」
遠藤が振り返ると、そこには白衣姿の神崎が立っていた。穏やかな目元に、どこか安心したような笑みを浮かべて。
「お疲れ。歩行練習、うまくいったって聞いた」
「……うん、少しだけど、歩けたよ」
雪乃が少し照れたように答えると、神崎はベッドの脇に近づき、そっと彼女の頭に手を置いた。
「よく頑張ったな。偉い」
そのまま優しく髪を撫でながら、ひざまずくようにして目線を合わせる。
「無理してないか? どこか痛いとこない?」
「大丈夫、疲れただけ。先生が来てくれて……ほっとした」
二人のやりとりを見ていた遠藤が、あきれたように笑う。
「……先生、暇なんですか? またこんな時間に来て」
神崎はその言葉に一瞬だけ目を細めたが、すぐに余裕の笑みを浮かべて答えた。
「暇を“作ってる”だけですよ。彼女のために」
その言葉に、雪乃の顔が一気に赤く染まる。
遠藤は盛大に吹き出した。
「うわ、堂々としてるな〜! そんなこと、患者の前で言う医者初めて見たかも」
「……患者じゃなくて、“彼女”だからね」
と、神崎がさらに畳みかけるように言いながら、雪乃の頬に指先で触れる。
そして何のためらいもなく、額にそっとキスを落とした。
「本当に……よく頑張った」
「……先生、恥ずかしいから……遠藤さんが……」
雪乃が小声で抗議するが、遠藤はにやにやが止まらない。
「いや〜、これはもう病棟の癒しコンビだね。これから毎日見守らせてもらおうかな」
「それだけはやめてください」
神崎が呆れたように肩をすくめると、遠藤はにっこり笑って病室を出ていった。
二人きりになった空間で、神崎は雪乃の手を取り、優しく握る。
「……ちゃんと眠れてる? 疲れすぎてないか?」
「先生が来てくれると、安心する。ずっといてほしいくらい……」
「じゃあ、いられる限り、いる。雪乃がそう言うなら」
その声は穏やかで、どこまでも深い。
午後の光に包まれながら、雪乃の心もまた、神崎の優しさに包まれていった。



