モニターの点いた会議室に、外科チームの執刀予定医、杉村英司(すぎむら えいじ)が姿を現す。
50代後半、経験豊富で冷静な判断力に長けた外科医。
神崎とは過去に何度か症例を共にしている、信頼できる人物だ。
「お疲れ。神崎、滝川。患者の件、資料は確認してある」
神崎が軽く会釈し、要点を整理するように口を開く。
「患者は25歳女性、先天性心室中隔欠損症。小児期未治療で、ここにきて感染性心内膜炎を発症。現在は内科的治療で炎症反応は沈静化し、血培も陰性です」
杉村が頷く。
「術式はパッチ閉鎖。瘢痕形成の程度によっては調整するが、心内膜炎の合併後としては早めの対応が望ましい。手術そのものに大きな難しさはないが、術前のコンディションが肝だな」
ここで滝川が声を上げた。
主治医としての落ち着いた調子で、しかし言葉には芯がある。
「精神面について気がかりな部分もあったが、現在は比較的安定しています。生活環境が整ってきたことも大きく、信頼できる支援者の存在が、患者の安心感を支えている」
神崎は静かに視線を落としながら、その言葉に内心で深くうなずいていた。
滝川は続ける。
「これまでの経過を見ても、恐怖感や拒絶反応は徐々に和らいでいる。本人の同意が取れる可能性は高いと考えています。8月上旬の手術を目標に、こちらでも調整を進めます」
杉村は短く考え込み、それから口を開いた。
「了解。スケジュールは仮で押さえる。術前評価は入念にやるから、必要な検査は早めに回してくれ」
神崎が頷き、控えめながら力強く言葉を返す。
「ありがとうございます。患者の同意が得られ次第、速やかに連絡します」
カンファレンスはわずか十五分足らずで終了したが、その場にいた三人の間には、確かな信頼と緊張感が共有されていた。
50代後半、経験豊富で冷静な判断力に長けた外科医。
神崎とは過去に何度か症例を共にしている、信頼できる人物だ。
「お疲れ。神崎、滝川。患者の件、資料は確認してある」
神崎が軽く会釈し、要点を整理するように口を開く。
「患者は25歳女性、先天性心室中隔欠損症。小児期未治療で、ここにきて感染性心内膜炎を発症。現在は内科的治療で炎症反応は沈静化し、血培も陰性です」
杉村が頷く。
「術式はパッチ閉鎖。瘢痕形成の程度によっては調整するが、心内膜炎の合併後としては早めの対応が望ましい。手術そのものに大きな難しさはないが、術前のコンディションが肝だな」
ここで滝川が声を上げた。
主治医としての落ち着いた調子で、しかし言葉には芯がある。
「精神面について気がかりな部分もあったが、現在は比較的安定しています。生活環境が整ってきたことも大きく、信頼できる支援者の存在が、患者の安心感を支えている」
神崎は静かに視線を落としながら、その言葉に内心で深くうなずいていた。
滝川は続ける。
「これまでの経過を見ても、恐怖感や拒絶反応は徐々に和らいでいる。本人の同意が取れる可能性は高いと考えています。8月上旬の手術を目標に、こちらでも調整を進めます」
杉村は短く考え込み、それから口を開いた。
「了解。スケジュールは仮で押さえる。術前評価は入念にやるから、必要な検査は早めに回してくれ」
神崎が頷き、控えめながら力強く言葉を返す。
「ありがとうございます。患者の同意が得られ次第、速やかに連絡します」
カンファレンスはわずか十五分足らずで終了したが、その場にいた三人の間には、確かな信頼と緊張感が共有されていた。



