翌朝。
窓の外はやわらかな陽の光に包まれ、部屋には温かい香りが満ちていた。

ダイニングテーブルには、焼き魚と味噌汁、それに小さなサラダ。
すっかり病院食には飽きていた雪乃のために、大雅が用意してくれた朝食だった。

「よく噛んで。薬、飲む前にはちゃんと食べるんだぞ」

「はいはい、先生……じゃなくて、大雅さん」

くすっと笑って雪乃が言うと、大雅もふっと目を細めた。

薬を見届けるようにそばに座り、雪乃がしっかり飲み終えるまでじっと見守っているその姿に、雪乃は少し照れながらも安心感を覚えていた。

「夜には帰ってくるから、今日は家でゆっくりしてて。無理は、しない」

「うん、ありがとう。気をつけてね」

玄関で靴を履いた大雅を見送り、ドアが閉まると、部屋に静けさが戻った。

ほんの少し、胸の奥がきゅっとなる。でも、それは寂しさではなく、あたたかな余韻だった。