過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

神崎に促されるまま、雪乃は静かにソファに腰掛けた。
背もたれは程よく柔らかく、沈み込みすぎない座り心地が妙に安心感をくれる。

ほどなくして、部屋の奥から神崎が戻ってきた。
手には、淡いグレーの薄手のブランケット。
「冷房、弱めにしてるけど……一枚かけたほうが体、楽かも」

そう言いながら、そっと膝に掛けてくれるその手つきに、雪乃はまた胸がじんと熱くなった。
どこまでも、さりげなく、自然に人を気遣える人だ。つくづくそう思う。

「温かい飲み物にする? 手、冷たくなってたでしょ。タクシー、寒かった?」

まるで自分の体調を言い当てられたようで、雪乃はくすりと笑ってしまう。
「あは……当たりです。温かいので、お願いします」

神崎は小さく頷いて、キッチンへと消えた。
やがてほうじ茶のふんわりと香ばしい香りが漂ってくる。

ほどなく戻ってきた神崎は、雪乃の前に湯気の立つ湯呑をそっと置き、自分には麦茶の入ったグラスを持って、隣に腰を下ろした。

「どうぞ、お嬢様」

彼の冗談混じりの一言に、雪乃は目を細めながら「かたじけない」と言ってお辞儀の真似をする。

その仕草に、神崎はふっと笑った。
やさしく、穏やかな空気が、ふたりの間にゆっくりと流れていた。