過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

翌朝、雪乃はいつもより早く目を覚ました。
カーテン越しに差し込む朝日が、病室を柔らかく照らしている。

ICUを出てから、こうして静かな朝を迎えられるようになったことが、どこか夢のようだった。

今日は、一連の検査がある。

血液、心エコー、腹部エコー、そして感染が完全に治まっているかの確認。

頭では「大丈夫」と分かっているつもりでも、胸の奥に小さな不安が巣くっていた。

(もし、また何か見つかったらどうしよう……)

そんなふうに考え始めると、自然と手が膝の上で強ばる。

自分の身体がどこまで回復しているのか。自分はもう、健康を取り戻せたのか。

それを突きつけられるのが、検査というものなのだと思い知る。

コンコン、とノックがあり、神崎が白衣姿で入ってきた。

「おはよう。ちゃんと寝られた?」

「……はい、なんとか」

「顔色いいね。緊張してる?」

図星をつかれて、雪乃は少しだけ眉を寄せた。
それでも神崎は、笑わずに真っすぐ彼女を見ていた。

「検査、全部付き添うよ。技師に話は通してある。なるべく待たせないようにもしたし、しんどかったら途中で言って」

その言葉に、雪乃は驚いて顔を上げた。
こんなふうに、患者ひとりにここまで配慮してくれる医者が、どれだけいるだろう。

検査がいかに不安な時間かを、彼はちゃんと分かっている。
「仕事だから」ではなく、「あなたのことだから」と言ってくれている気がして――胸があたたかくなった。

「……ありがとうございます」

その小さな声に、神崎はうなずいて、そっと彼女の肩に手を添えた。