ひとしきり笑ったあと、滝川と神崎はふと視線を交わし、空気が少しだけ引き締まる。
神崎は、雪乃の枕元に目をやりながら、落ち着いた声で口を開いた。
「……そろそろ、抗生剤の投与も終わりにしていいかなって思ってる。感染症の症状も落ち着いてるし、血培も陰性が続いてる。明日あたり、最終的な検査一式、回しておこうか」
滝川は神妙にうなずいた。
「うん。CRPも下がってるし、心内膜炎の所見も消えかけてる。あとは画像と血液データで問題なければ、いったん切ってみて様子見だな」
「経過としてはかなり順調だよ。奇跡に近いくらい」
神崎の口元に、安堵とほのかな誇らしさが浮かんだ。
滝川は少し冗談めかして口を開く。
「それもこれも、担当医が優秀だったからな」
「……俺じゃなくて、患者さんが頑張ったんですよ」
神崎が苦笑しながら言うと、雪乃はそっとまぶたを伏せ、微かに笑った。
「明日、頑張ります……検査」
「無理させないから、ゆっくりでいいよ。全部ちゃんと確認してから退院のこと考えようね」
滝川も「そうそう」と頷き、壁に寄りかかりながら腕を組んだ。
「でもなあ、退院したら神崎の顔見られなくなるのはちょっと寂しいんじゃない? そろそろ正式に“彼氏”ってことでいいんじゃないの?」
「滝川先生!」
神崎と雪乃の声がほぼ同時に重なり、再び病室に笑い声がこだました。
神崎は、雪乃の枕元に目をやりながら、落ち着いた声で口を開いた。
「……そろそろ、抗生剤の投与も終わりにしていいかなって思ってる。感染症の症状も落ち着いてるし、血培も陰性が続いてる。明日あたり、最終的な検査一式、回しておこうか」
滝川は神妙にうなずいた。
「うん。CRPも下がってるし、心内膜炎の所見も消えかけてる。あとは画像と血液データで問題なければ、いったん切ってみて様子見だな」
「経過としてはかなり順調だよ。奇跡に近いくらい」
神崎の口元に、安堵とほのかな誇らしさが浮かんだ。
滝川は少し冗談めかして口を開く。
「それもこれも、担当医が優秀だったからな」
「……俺じゃなくて、患者さんが頑張ったんですよ」
神崎が苦笑しながら言うと、雪乃はそっとまぶたを伏せ、微かに笑った。
「明日、頑張ります……検査」
「無理させないから、ゆっくりでいいよ。全部ちゃんと確認してから退院のこと考えようね」
滝川も「そうそう」と頷き、壁に寄りかかりながら腕を組んだ。
「でもなあ、退院したら神崎の顔見られなくなるのはちょっと寂しいんじゃない? そろそろ正式に“彼氏”ってことでいいんじゃないの?」
「滝川先生!」
神崎と雪乃の声がほぼ同時に重なり、再び病室に笑い声がこだました。



