雪乃と神崎が請求書をやり取りしていると、病室の扉がノックもなく開き、滝川が元気よく入ってきた。

「何が70万だって？」
興味津々な目で2人の顔を覗き込みながら、にやりと笑う。

「医療諸経費の請求が、70万円もいってるんです……」
雪乃は苦笑し、声が少し震えながら告げる。

滝川は病室の個室を見回し、思わず笑みをこぼした。
「ああ、ここ、マジで高いんだよな……」

神崎も肩を震わせながら、白衣のポケットからもう一度請求書を取り出し、にこにこと笑みを浮かべる。

滝川は軽口を叩きつつも、どこか温かみのある声で言った。
「やっぱり、姫にはちゃんと貢物をしないとな。ここじゃまるで王様の住まいだ」

その言葉に違和感を覚えた雪乃が、鋭く問いかける。
「あの……もしかして、神崎先生を嫌々うちの店に連れてきたのって……？」

滝川は声を弾ませ、照れ隠しのように笑いながら答えた。
「ばれたか！」

「正直に言うと、こいつ女っ気なさすぎてな。社会経験として連れてっただけなんだ。慣らしてやろうと思ってさ……」

「そしたら、まさか患者さん連れてくるとはな。ほんと予想外すぎて笑うわ」

「患者が自然と寄ってくるタイプの医者。まさに医者の鏡だな、な？」

隣で神崎は軽く咳払いして視線をそらし、雪乃は思わず頭を抱えた。