過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

ストレッチャーが廊下を滑るように進む。
その横を、神崎は一定の距離を保って歩いていた。

雪乃の顔は白く、目を閉じたまま。
酸素マスクの下でかすかに唇が動いている。

「……先生……」

か細い声が、耳に届いた気がして神崎は振り向く。

「雪乃……俺だ。大丈夫だよ」

唇が動いているが、言葉にはなっていない。
神崎はそっと彼女の手を取った。

ひどく冷たい。
けれど、その指先が微かに神崎の親指を握り返した。

「……ありがとう。よく、戻ってきてくれた」

その小さな反応が、彼にとってどれだけの意味を持つか。
医師である以前に、彼は今、目の前の彼女の無事を願う一人の人間だった。