「……ここの浮腫、昨日より強くなってますね。ご自身では何か……」
病室で回診中の滝川は、患者と穏やかに会話をしていた。
カルテ端末を操作しながら、足の腫れ具合を目視で確認し、聴診器を肩にかけたまま淡々と話を進めていた。
その時――
白衣のポケットで、PHSが短く震えた。
ちらりとディスプレイに目を落とすと、表示されたのは〈7西病棟 遠藤〉。
このタイミングでの着信は、ただごとではない。
「……すみません、少し失礼します」
患者に軽く会釈すると同時に、滝川は動作を止め、すぐさまPHSを耳に当てた。
「滝川です」
受けた瞬間、受話器の向こうからはいつもの落ち着いた遠藤の声ではなく、緊迫感を帯びた声が返ってきた。
『雪乃さんが急変しました。意識レベル低下、頻呼吸と頻脈。SpO2は維持。神崎先生にはまだ連絡がつきません』
「わかりました。すぐ行きます」
滝川は端末を切ると、PHSを胸ポケットに戻しながらすぐに立ち上がった。
患者に向き直り、
「申し訳ありません。急患が出たので、診察を一旦中断させてください。後ほど必ず戻ります」
そう伝えると、白衣の裾を払ってすぐに病室を出ていく。
廊下に出るなり、足早にナースステーションの方向へと走り出す滝川。
その眼差しはいつになく鋭く、迷いも躊躇も一切なかった。
病室で回診中の滝川は、患者と穏やかに会話をしていた。
カルテ端末を操作しながら、足の腫れ具合を目視で確認し、聴診器を肩にかけたまま淡々と話を進めていた。
その時――
白衣のポケットで、PHSが短く震えた。
ちらりとディスプレイに目を落とすと、表示されたのは〈7西病棟 遠藤〉。
このタイミングでの着信は、ただごとではない。
「……すみません、少し失礼します」
患者に軽く会釈すると同時に、滝川は動作を止め、すぐさまPHSを耳に当てた。
「滝川です」
受けた瞬間、受話器の向こうからはいつもの落ち着いた遠藤の声ではなく、緊迫感を帯びた声が返ってきた。
『雪乃さんが急変しました。意識レベル低下、頻呼吸と頻脈。SpO2は維持。神崎先生にはまだ連絡がつきません』
「わかりました。すぐ行きます」
滝川は端末を切ると、PHSを胸ポケットに戻しながらすぐに立ち上がった。
患者に向き直り、
「申し訳ありません。急患が出たので、診察を一旦中断させてください。後ほど必ず戻ります」
そう伝えると、白衣の裾を払ってすぐに病室を出ていく。
廊下に出るなり、足早にナースステーションの方向へと走り出す滝川。
その眼差しはいつになく鋭く、迷いも躊躇も一切なかった。



