過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

溝口は遠藤さんから何かを受け取ると、ちらりと雪乃を見て、そのまま足早にその場を離れていった。

遠藤はすぐに雪乃に気づき、優しい声で言った。
「おかえりなさい」

雪乃はかすれた声で答える。
「ただいま戻りました」

遠藤は微笑みを崩さずに、
「そろそろ夕方の回診の時間なので、お部屋に戻って待ちましょうか」

病室のドアを開けて中へ入ると、遠藤は振り返りざまに訊いた。
「どうでしたか?」

その言葉に、雪乃は一瞬だけ答えに迷った。

遠藤の顔が心配そうに曇る。
「雪乃さん?大丈夫ですか?」

その声が耳に届くが、雪乃の意識はゆっくりと薄れていった。

頭がぐらぐらと揺れ、視界がぼやけて遠のく。
呼吸は浅く速くなり、胸が締めつけられるような苦しさに襲われた。

身体は重く、まるで自分の存在が溶けていくかのような感覚に陥る。
全てを支えてきた「もう大丈夫」という強い意志が、無理を続けて限界に達し、ぽろぽろと崩れていく。

胸の痛み、脈の乱れ、震え。
呼吸が上手くできず、焦りが増す。

雪乃の目は虚ろになり、口を小さく動かすが言葉は出ない。

その異変を見逃さなかった遠藤はすぐに体を支え、強く抱きかかえた。
「誰か!助けてください!」

大きな声でナースステーションに呼びかける。

雪乃の限界が、今まさに訪れた瞬間だった。