過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

ベッドに倒れ込んだまま、雪乃はただ天井を見ていた。

視界が、少しずつ暗くなっていく。
もしかしたら電気をつけることすら忘れていたのかもしれない。
それでも不思議と、寒さは感じなかった。

(ああ、今日も終わった。)

呼吸はまだ荒く、心臓も落ち着かないまま。
けれど、それすらも徐々に遠ざかっていく気がした。

痛みはあっても、涙は出なかった。
泣いたって、もう誰も見てくれない。
誰かに助けてって言ったって、届くことはない。

“死にたい”わけじゃない。
でも、“生きたい”と願うには、もう疲れすぎていた。

誰にも気づかれずに、ただ眠るように消えてしまえば――
そんなふうに思ってしまう夜が、何度あっただろう。

部屋の静寂が、心地よい。
整えられた部屋が、まるで自分の終わりを待っているようだった。

(このまま、朝が来なかったら……)

そんな願いにも似た思いを、心の中でそっと唱えた。

目蓋が、落ちる。
心音が、遠くなる。
呼吸が、浅くなる。

光も音も、世界さえも、自分からゆっくりと遠ざかっていく。
何かが溶けていくように、意識が、静かに、静かに――

眠るように、遠のいていった。