過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

その夜、雪乃はなかなか眠れなかった。

目を閉じても、心臓の鼓動ばかりがやけに耳に響いて、うまく寝つけない。

思い出すのは、さっきの出来事。

神崎先生が、そっと手を握り直してくれたあの瞬間も、
冗談めかしながらも、ぎゅっと抱き寄せてくれたあのぬくもりも。

今まで何度か手を握ってくれたことはあった。
でも、あれは不安なときに安心させてくれる“先生”の優しさで──

でも、今日は違った。
明らかに、それ以上だった。

ほんの短いハグだったのに、顔が熱くなって、胸がキュッと疼く。
これって、まさか……病気のせいじゃない。

彼は――神崎先生は、明らかに、医者と患者という一線を越えようとしてる。
いや、冷静に考えたら、最初からそうだったかもしれない。

あの夜、キャバクラで偶然会って、家まで送ってくれた。
それだけじゃない。

診察して、薬を用意して、わざわざ郵送してくれて。
そのうえ、自分の勤務先の病院に私の診察予約まで入れて……。

それって本来、医者としてやることなの?

――もしかして、ずっと前から、私は「患者」以上の存在として扱われていた?

気づけば、また胸の奥が高鳴っていた。
眠気は遠のく一方で、彼の笑顔ばかりが、脳裏に浮かんで離れない。