過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

神崎は、ベッドサイドのモニターにちらりと目をやりながら立ち上がった。
その手がポケットの中で軽く動いたかと思えば、ふとした間を置いて、雪乃のほうを見つめた。

「……疲れてなかったら、今日も夜、少し話がしたいんだけど。いい?」

その声音は穏やかだったが、目の奥にはいつもと違う静かな色があった。
それは、何かを伝えようとする人間の目だった。
迷いではなく、覚悟。
たとえ雪乃がそれを明確に言葉にできなくても、なぜか胸の奥でわかってしまう。

雪乃は、目を伏せることもせず、まっすぐ神崎を見つめ返した。

「もちろん。待ってます」

その返事に、神崎の表情が一瞬だけやわらいだ。
「そっか」と低く呟いて、軽く目元を緩める。

けれどそのあとの背中には、静かな決意のようなものが滲んでいた。
その背が病室を出ていく音を、雪乃は鼓動とともに感じながら、胸に手を当てた。

夜が来るのが、怖いような、待ち遠しいような。
そんな不思議な気持ちのまま、彼の言葉を何度も反芻していた。