過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

夕方。病室のドアがコンコンとノックされ、食事を載せたカートの音と一緒に、担当看護師の遠藤が顔を覗かせた。

「こんばんは、大原さん。夕食持ってきましたよ~」

「はーい……ありがとうございます」

ベッドの上でゆっくり体を起こすと、遠藤は手慣れた様子でテーブルをセッティングしてくれる。
そのトレイの端に、見慣れないカップがちょこんと載っていた。

「……あれ?」

不思議そうに見つめる雪乃に、遠藤はにっこり笑って言った。

「それ、神崎先生からの差し入れですよ。ゼリー、ですって。いいですね~、担当医からの差し入れなんて。羨ましいなあ」

「えっ……本当に?」

「本当ですよ。わざわざスタッフステーションに持ってきてくれてました。『食事のときに一緒に出してあげてください』って。優しいですね、神崎先生」

雪乃は思わずゼリーのパッケージに目を落とした。
市販のシンプルなゼリーだけど、それがかえって、神崎の気遣いをリアルに感じさせた。

(……ほんとに持ってきてくれたんだ)

その小さな一品が、今日あった会話を鮮やかに思い出させた。

——「大人の患者さんには、特別にゼリーでも差し入れてあげようかな」
——「それはちょっと嬉しいです」

言葉通り、ちゃんと“ちょっと嬉しい”どころじゃないくらい嬉しかった。
心がじんわりとあたたかくなる。

「ではでは、ゆっくり食べてくださいね。何かあったらナースコール押してくださいね」

遠藤が笑顔を残して部屋を出ていくと、雪乃は静かにトレイに手を伸ばした。
あたたかいご飯と、そしてゼリー。
体が少しずつ回復していく実感と一緒に、心まで満たされていくような気がした。

スプーンでゼリーをすくいながら、雪乃は思わず小さく微笑んだ。

——次に神崎先生と会ったら、「ちゃんと食べました」って、伝えよう。

そんなささやかなやり取りが、今はとても特別に感じられた。