ホリー・ゴライトリーのような女





撮影がオールアップし、周りのスタッフや、キャストから受ける拍手の中、清原が花束を持ってきた。僕はそれを受け取り、「いい映画になる一要素として、僕の演技が活きることを願っています」というようなことを言った。自分でも大人になったなと感じた。謙虚な姿勢こそが、大人としての第一歩であって、この日、僕は大人の言う、大人になれたような気がした。


打ち上げにももちろん参加した。監督の金井さんから、「次にやってみたい役柄はどんなの?」と聞かれた。次にやってみたい役柄……。僕は、「ジョーカーですかね」と答えた。「ジョーカー」と金井さんは反芻した。


「いいね、それ。面白いと思う」


と言ってくれた。


当時、僕は『ダークナイト』のジョーカー役、ヒース・レジャーの演技に感銘を受けて、そう答えた。それから何年か経って、『ジョーカー』という映画が上映され、ホアキン・フェニックスがジョーカー役を演じた。このホアキン・フェニックスの演技こそ、僕が思い描いていたジョーカー像であった。ヒース・レジャーのジョーカーも素晴らしいのだが、比べるとすると、僕はホアキン・フェニックスのジョーカーが好きだ。初めて『ジョーカー』を観た時、先を越された、と思った。常識的に考えて、僕にジョーカー役がやってくるはずもないのにである。金井さんは、あの時「面白い」と言ってくれた。でも、金井さんはきっと適当に話を合わせただけだ。僕がジョーカー役をできるなんて、まったく思っていなかっただろう。