僕は中山という男を許さない。一生許すつもりはないし、仮にもし、街中で久しぶりに出会うものなら、自分でも何をしてしまうかわからない。
バイトを辞めた。やりがいを少しは感じていたバイトだ。店長には引き止められたけど、僕は頑として、辞める意思を貫いた。
それから数年経って、僕の代わりに専門で同じだったやつが、そのバイト先で働き始めた。そいつが言うには、中山は相変わらずまだいて、こともあろうに、そのバイト先のやつを露骨に口説き始めたのだという。仕事中にそいつのケツを触ったり、「好き好き!」と言いながら、キスをしてこようとしたり。結局、そのことがバイト全体でバレて、居づらくなって、中山もバイトを辞めたらしい。しかし、毎朝、辞めたはずのバイト先に来ては、向かいのコンビニの喫煙所でタバコを吸いながら、そいつのことをじーっと見ていたらしい。気味悪がって、そいつも結局バイトを辞めたらしいが、どうして真面目にやってるやつが辞めなきゃいけないのか。理不尽極まりない。
本当は語るかどうか、最後まで悩んだ。でも、ここで語っておかなければ、一生僕は、あの中山に囚われたまま、抜け出せないような気がした。だから、語った。フラッシュバックする記憶を、断片的ではあるが、必死に紡いだ。僕はこの先、女性しか愛せないだろう。それは戸籍上かつ、性自認が女性の人しか。でも、この先、僕だってわからない。そういうものに目覚めてしまう可能性も十分にあり得る。
仮に僕が、LGBTQになったとして、少なくともあの中山のようにはならないようにだけ、ここで忘れずに、誓っておこうと思う。



