ホリー・ゴライトリーのような女





家に帰る道中で、僕は中山さんとのキスばかり考えていた。それと同時に、梨本さんが僕に惚れていると思い込んでいた自分が恥ずかしく、またなんて思い上がりをしていたのかと、腹が立った。


何より腹が立っているのは、中山さんにだ。中山さんは結局、ゲイだった。僕に優しくしてくれたことも、すべては下心からくるものだったのだ。そのことが、人間不信になるほど怖くて、恐ろしくて、腹立たしく、中山、ぶち殺してしまいたい衝動に駆られた。


「っざけんなよ……」と一人つぶやいた。「ふざけんな、ばか!」と今度は思いっきり叫んだ。周りで帰路を急ぐサラリーマンや、ウーマンが僕の方を、軽蔑のまなざしで見ていた。


目の前の空き缶を思いっきり蹴った。蹴った空き缶は、前を行く、フリルのスカートを履いた女性のふくらはぎ辺りに当たった。女性は僕の方を見て、怖いと思ったのか、足早に駆けて、すぐ近くにある路地を曲がった。


中山、キモイ。中山、ふざけんな。死ね、中山。


僕は今、考えられる罵詈雑言をすべて、頭の中で叫んだ。