トイレのドアをそっと開けると、幹事の女はいなかった。 僕はそのまま、こそっと店の外に、逃げるように飛び出して行った。 それから居酒屋の真向かいにあるコンビニへ行き、ペットボトルの緑茶を買った。店の外の喫煙所で500mlのペットボトル半分くらいを飲み、ふーっと息をついた。 「タバコ。銘柄何?」 と鹿波(しかなみ)が聞いてきたのは、そんな時だった。