バイトが終わり、家に帰って王さんからもらったキムチを一口、食べてみた。
なるほど、これは美味しい。辛さがマイルドというか、角がないというか、清々しい辛さというか、なんと表現すればいいだろうか。とにかく、これはそのままでももちろん美味しいし、料理にもいろいろ使えそうだ。
しばらくコンビニの飯が続いていた。
今日こそは自炊をしようと、僕は買い物に出た。近くのショッピングモールへ行き、まずは4階の書店に入った。そこで、文庫本を1冊購入した。それを読みながらカフェに入り、深煎りのグアテマラコーヒーを飲見ながらその文庫本を読んだ。
本は、トルーマン・カポーティの「ティファニーで朝食を」だ。
ホリー・ゴライトリーという女性とポールという男性の恋愛を描いたラブストーリー。僕は最初この、ホリー・ゴライトリーという女性がどこか、鹿波に似ていると感じた。誰にも縛られることなく、自由奔放なホリー。それは鹿波にも共通するところがあって、彼女は基本、群れることを嫌い、いつも一人でいた。かと言って、周りの空気は壊さず、協調性も兼ねている。社交的でもあったし、小心者でもあった。たまに突拍子もない行動をとったかと思うと、流行りにどこか冷めているところもあった。
改めて。こうして語れば語るほど、ホリー・ゴライトリーと鹿波が似ているというのは錯覚のように感じる。ホリー・ゴライトリーのことはよく知らない。初めて読んだこの日からもう随分と年月が経っていて、今となっては漠然としたイメージの中にいる。でも僕は今でも鹿波を知っている。いい所も悪い所も、全部知っている。その事実だけでも、ホリー・ゴライトリーと鹿波は違う。全くもって、似ていない。



