ホリー・ゴライトリーのような女





自分の部屋に戻り、シャワーを浴びて、そのままベッドに頭から突っ伏した。


途端、LINEの通知音が鳴って、画面を見ると中山さんからメッセージが届いていた。


『今日はありがとう。ところで、お前今、付き合ってるやつとかいんの?』


中山さんからのメッセージを読んで、僕の頭の中では、清原の顔が浮かんだ。しかし、すぐに頭を振って、頭の中の清原を消した。


『今日は誘ってくれてありがとうございました。付き合ってる人はいませんよ』


すぐに返信が来た。


『なるほど。じゃあ、好きな人は?』


『それもいませんよ』


すぐにまた返信が来た。


『じゃあ、気になってる人は?』


僕はこの一連のやりとりを見て、さすがにピンと来た。ははぁん、ってなもんで、どうやら、梨本さん。僕に惚れたらしい。


梨本さんは、バイト先の夕勤、つまりは夕方勤務の人で、僕と同い年の女の子だ。梨本さんとの出会いは、僕が深夜、シフトに入っていた時だ。ふらっと店の様子を見に来た梨本さんが、僕と一緒に入っていた比嘉さんと親しげに話をしていて、その会話の内容を聞いていると、ああ、この人もここでバイトしている人なんだと知った。容姿は決してタイプではなく、色白のカバを彷彿とさせた。しかし、今日一緒にシーを回って、明るくユーモアのある女性だということを知った。絶叫系が大好きな人で、逆に苦手な僕の腕を無理矢理引っ張って、リードしてくれた。それだけのことで、僕の心は揺るがないが、なるほど。やっぱり僕はモテるらしい。


思えば、イケメン枠として生きてきた。幼稚園の頃から女の子との約束をダブルブッキングするほどのモテ具合で、小学校、中学校、高校に入っても、どこか僕はモテていた。そりゃ、露骨にバレンタインデーのチョコレートがトラック1台分なんてことはなかったけれど、同級生から、先輩、後輩まで幅広く告白をされることは多かったし、自分から告白をしたことはほとんどなく、女性には不自由しなかった。あの清原とも、僕に将来性があれば付き合うことはできていただろうし、鹿波だって、今よりは僕への見方が違ったはずだ。道を違えたとすれば、進路選択で、しかし、モテてきた人間が、将来性まで意識してモテ続けるなんてことは少ないのではないだろうか。逆に、学生時代全くモテなかった人が、お金も地位も手に入れた結果、モテ期が到来するなんてこともあるだろう。これを僕は、「非モテの革命」と呼んでいて、僕のような絵札ばかりの人間は、途端に立ち打ちできなくなってしまうのだ。事実、僕はあの学校に入ってから、ほとんどと言っていいほど、モテなくなった。卒業してからは多少なりとも、いろんな女性と関係を持ったが、どれも長続きしなかった。結局原因は経歴なのだ。


『それもいませんよ』


と返すと、中山さんから白いウサギが親指を立てているスタンプを送ってきた。それに既読をつけて僕は眠った。