ホリー・ゴライトリーのような女





ラーメン屋の前での別れ際、一人で自転車にまたがった王さんが、ふと、僕の方に振り向いて言った。


「スタミナラーメンで、スタミナつけて、夏を乗り切ろうね!」


普段は何でもないであろうその言葉が、大陸と島国という隔たり、文化などを超越して、僕の心に純粋な言葉として届いた。


「はい! スタミナつけて、乗り切りましょう!」


と僕も、ガラにもなく、笑顔で手を振った。王さんもそれを見て、笑顔で手を振ってくれた。


政治についてのネットニュースのコメント欄を見ると、僕は今でも辟易する。ここまで熱心な愛国心、結構、ご苦労、お疲れ様ってスタンスで見ているが、同時に、どうしてもっと俯瞰的に見れないのだろうかと思う。わかったような口ぶりのコメンテイター崩れみたいな人は、動画配信サービスで、「国と国が近いのだから、揉めるのは当然だ」なんて言葉で片づける。でも、ずっと近くにいたって、少し離れていたって、人は仲良くできる。まあ、仲良くしろとまでは言わないが、その、結構、ご苦労、お疲れ様なコメントを書く暇があれば、今自分の隣にいる大事な人に、愛の言葉一つ、声に出して伝える方がよっぽど有意義な時間じゃないかと思う。


そんなこと、この時の僕は考えもしなかった。スタミナラーメンでお腹が満たされ、王さんの言葉で心が満たされ、帰る道中、自然と口笛を吹きながらスキップしていて、今思えば、あの時の僕は、本当に自由だった。