ピザはあまり食べられなかった。僕は自分の部屋に帰り、少しだけ仮眠をとった。それから支度をして、歩きタバコでバイト先まで向かった。店長は「今日もよろしくね」と言った。初めて王さんとシフトが一緒になった日だった。王さんは、「これから一緒に頑張っていきましょうね」と握手を求めてきた。半ば照れながらも、僕は差し出された手を取り、昨日、比嘉さんから教えてられた仕事を一つ一つ思い出しながら、淡々とこなした。王さんは、ドリンクの補充をする時は、少し寒いからこれを着るといいと、掛けられたジャケットを指差した。比嘉さんはジャケットの存在を全く教えてくれなかった。
「休憩、どっちが先に入るか、じゃんけんしよ~」
と王さんが言って、僕はじゃんけんに負けた。制服を脱いだ王さんは、レジを出て、お客の立場になった。おにぎりを2つとお茶を買って、事務所でそれを食べた。僕は入り口に近い方のレジをクローズさせ、事務所に近い方のレジへ移動し、事務所のドアを少し開けて、中にいる王さんへ聞いてみた。
「王さんには夢がありますか?」
「夢? 日本でアニメを作る仕事に就くこと、かな」
「どこか、専門学校とか通ってるんですか?」
「ううん、私、ここでしか働いてない」
「じゃあ、どうやってアニメの仕事に就くんですか?」
「わからないね~」と王さんは笑った。
「でもね、持ち続けてたら、いつか巡ってくるような気がしてる」
「その時に、ノウハウがなかったら、ダメじゃないですか?」
「そうかもね~でも、それならそれで、他にやりたいことも見つかりそうだから、別にいい」
王さんは、どこまでも自由な人だなと思った。



