ホリー・ゴライトリーのような女





ピザが届いて、僕は自分の部屋から缶ビールを4本持ってきた。乾杯をして、鹿波は半透明な緑色した錠剤を1錠、ビールで流し込んだ。


「何の薬?」


「それ、他の女の子には絶対聞かない方がいいわよ?」


「なんだそれ。まあ、いいや。そんなことよりビールと飲むのってまずいんじゃないか?」


「ビールの味は変わらないわよ」


「いや、その『まずい』じゃなくて」


「冷めるわよ」と鹿波はピザを一切れ、取り皿に取った。


「ここのピザはあまりチーズが伸びないのね」


「鹿波はさ、『好きだけど、好きじゃない』って気持ちになったこと、ある?」


「まさにこれだと思う」と鹿波はかじったピザを指差した。


「ピザソースは好きだけど、トマトは好きじゃない」


「なるほど」と僕もピザを一口食べた。


「じゃあさ、僕の場合の『好きだけど』と『好きじゃない』はどこなんだろう」


「人としては好きだけど、将来性がないところは好きじゃない」


「やっぱりそうか」


僕は頭を掻きむしりながら、カーペットの上で項垂れた。もし俳優という道を目指さなければ、僕たちは上手く行ったのだろうか。でも、俳優を目指さなければ、僕はきっと大都会、東京に行くなんて選択肢は選ばなかっただろうし、清原とも出会わなかったはずだ。こんなことになるなら、出会わなかった方がよかったと思うけれど、じゃあ聞くが、今のこのご時世、安定なんてものがどこにあるのだろうか。演技の才能しかない人間がいたとして、教師になることが、果たして本当の安定と呼べるのだろうか。