初日のバイトが終わった日の午後、僕は家でゾンビとはまた違うプロダクションの台本を読んでいた。スタッフリストには、『メイク・鹿波』の名前もあって、僕と鹿波が初めて一緒の撮影になった作品だった。
ゾンビの時とは打って変わって、ラブストーリー。それも純粋なラブストーリーで、役者の演技によって、良くも悪くもなってしまう、力量が試されるような台本だった。一人で読んでいると、どうも難しい掛け合いのところがあって、本読みを鹿波に手伝ってもらおうと、僕は鹿波の部屋を訪ねた。
「いいよ、付き合ってあげる」
鹿波にそう言われ、僕たちは鹿波の部屋で台本の読み合わせを行った。
「後悔してる」
「後悔? あなたが?」
「ああ、そうだ」
「それって、どっちの意味?」
「この場合、どっちの意味があるんだ?」
「出会ったことに後悔してるのか、それとも付き合ったことに後悔してるのか」
「それで言うなら、そのどっちでもない」
「あなたはいつもそう。話がさっぱり見えてこない」
「それはお互い様だ」



