「何ボーっとしてるの? やることないなら、仕事教えるから言ってくれないと」
比嘉さんは時折、僕にそう言うのだ。正直、比嘉さんのことはあまり得意ではなかった。何かにつけて仕事に厳しく、僕をまるで手足のように使う。そのくせ、自分は仕事をサボってばかりで、トイレ掃除やドリンクの品出しは特に雑でテキトーだった。当時28歳だった比嘉さんはシフトを水曜日に入れていた。僕はなるべく水曜日にシフトを入れないように気を配っていたのだけど、店長から頼まれると、出ざるを得なく、その後も幾度となく、比嘉さんと朝を迎えた。
もう一人、一緒になる人で気に入らない人がいた。土曜日に一緒になるぽっちゃりとした地味目な男の人で、彼はよく、店に一つしかないトイレにこもっては、仕事をサボってばかりだった。僕が「フライヤー関係のものを今のうちに洗っといてくれませんか?」と丁寧にお願いしても、いつも無視された。接客の声も小さく、よく店に彼の名前でクレームが入っていた。一度、僕がお腹を壊した時に、トイレに行こうとすると、彼が先にトイレに入っていて、もう我慢できなかった僕は、店を飛び出し、真向かいにあるコンビニでトイレを借りた。その間、店に誰もいないという時間ができて、防犯カメラのチェックをしていた店長から後日、こっぴどく叱られた。なぜか僕だけが。理不尽だなとは思ったけど、社会なんて結局理不尽なことだらけだし、その後もいろんな理不尽で怒られた。とにかく、今思い出しても彼のことは嫌いだし、もう二度と会いたくない。
ただ、他の人はみんないい人ばかりだった。
火曜日にシフトに入ると、王(オウ)さんという中国からの留学生の女の人と一緒になることが多かった。王さんは仕事も丁寧で、かと言って人の仕事に対して何かを言うような人ではなかった。歳は僕よりも少し上の22歳だったが、日本語も上手だったし、妙に馬が合った。お互いバイトが休みの時は、よく2人で飲みに行ったし、王さんの住んでいるアパートにも遊びに行ったことがある。学校で毎年行われる映画祭に招待した際は、僕の出ている作品を見て、
「とってもよかったよぉ~」
とハグをしてくれた。結局、この王さん。店長と些細なケンカをしてバイトを辞めてしまうのだけど、もしまだ日本にいるなら、ぜひ会いたいと思う。



