それからは、清原と一言も口を利かなかった。
打ち上げは朝4時前に終わり、僕はウーロンハイをこれでもかというほど、飲んだ。それでもほとんど酔えることなく、どんな話をしていても、必ずどこかで清原の言葉が蘇ってきた。脳内にこびりついて、離れない。無理矢理離そうとすればするほど、どんどん近づいてきて、僕の脳内を満たしていく。満たされた脳内は、まるで塩水に浸かった発電所のように、一切の機能を失い、僕の考えるという行為を破壊してしまう。
酷い一日だった。雨はすっかり止んでいた。アパートまでの道中、手持ち無沙汰になったビニール傘で僕は目につく限りの車を小突いて歩いた。
それを見ていたのだろう。後ろから、僕の着ていたパーカーのフードを思いっきり掴んだ男に、僕は大外刈りをきめられてしまった。アスファルトの上に大の字になって動けない僕は、金髪の男の怖い顔の奥で朝靄のかかった空を見た。もうどうにでもなってしまえ。このまま死んでしまったってかまわない。一向に。金髪の男が、僕を押さえつけたまま、言った。
「どこの中学生か知らないけどよぉ、俺のシマであんまり勝手なことしてると、学校調べてぶちのめすぞ」
「はい」
「お前さ、やっていいことと、ダメなことの区別もつかねーの?」
「そうですね、はい」
「何お前、泣いてんの? びびってんの?」
僕は自分でも気づかず、涙を流していたようだった。頬にじんわりと温かいそれは、完全に冷え切ってしまった感情を、優しくそっと、溶かしていく。第2陣、3陣と涙は溢れ、ぐしゃぐしゃの顔になった僕を、金髪の男は、腕を掴んで起こしてくれた。



