「結局飲むのかよ」と僕は今度は口に出して言った。しかし、完全に出来上がった大女優の耳には届かず、こうして制作科の男に絡んでいる。
「私はこんなゾンビ映画なんかじゃなくて、もっとこう、自分のキャリアにプラスになるような、そういう役柄を演じたいの! ねえ、私の言ってる意味、わかる?」
制作科の男は、「うーん」と首を傾げ、「まあ、はい……」と自信なさそうに答えた。ここずっと僕も同じようなことを思っていただけに、大女優の言うことには共感しかないし、拍手でも送って、賛辞の気持ちを表したってよかった。でもどうも、この大女優のことは苦手で、こいつと同じ思考だということに、腹が立ってくる。
大女優は、滝口といった。
俳優科にも一応、いくつかの専攻があって、僕と滝口は専攻が別だった。授業もあまり一緒になったことはなかったし、台本上以外では、ここまでの道中に交わした会話が初めてだった。
その滝口が、ビール片手に僕と清原の間に割って入ってきて、「ねえ、二人とも付き合ってるの?」と絡んできた。
「有名だよ。二人が同棲してるって話」
全く知らなかった。それは清原も同じようだった。



