ホリー・ゴライトリーのような女





「別に引き止めないけどさ」と僕も立ち上がって、伸びをした。


「とりあえず、夏までやってみたら? それで向いてないと思えば辞めればいいよ。どうせ夏に辞めるんだからって気持ちで、いろいろのめり込んでみたらいいじゃないかな。今辞めても、夏辞めても、どうせ僕たちはまだ18なんだから」


「ですね。はい。もう少しだけ続けてみます」


「うん。それがいい」


春の夜風は、運んでくる。この東京も例外ではなく、東京湾の海の香りと共にやってきて、漂い、そして満たす。アルコールの匂いとタバコの匂いと、安っぽい香水の匂いと、手を繋ぎ踊る。まるで『タイタニック』の三等のパーティーのシーンのように。


「焼き鳥ももらっていいですか?」


「ダメだ」


「ケチですね」


「ケチで結構」


清原は笑いながら、焼き鳥を一本手に持ち、自分の顔の前にかざした。


「何をしてるんだ? あげないぞ?」


「スカイツリーに重ねてるんです。これ、アップで撮ったら、画になりませんか?」


「どうだろ」と僕は清原の後ろに回り込み、スカイツリーに重なる焼き鳥を見た。


「なんだかゴツゴツとしてて、この世の終わりって画だな」


「もう、せっかくのいい雰囲気が……」


と清原は、頬を膨らませた。