ホリー・ゴライトリーのような女





「私、言ったんです。『そんなの絶対不可能です!』って。そしたら、監督は『別の人に任せるからいいよ』って」


「それで、どうなったわけ?」


「私、助監督外されちゃいました。でも、実際どう思います? 私の言ってること、間違ってますか?」


と清原は、僕の持っていたビールをひったくるようにして奪い、一口飲んだ。


「うーん、どっちも正しくない」


「どっちも、ですか?」


「うん。監督はやっぱりワンマンなところがあるからね。思い通りにならなかったからと言って、人を切っていくと、いずれ一人になる。だから、監督は助監督であるキミを言いくるめなきゃいけなかったんだ。そしてキミも。監督の描いている画を撮るために、尽力するのが助監督の仕事だろ? ただできないって言うんじゃなくて、なんとか実現させようと必死にもがくなり、代替案を提案するなりしないと」


「うーん。でも、あの場合、それは……」


「ってことは、キミの助監督としての力はそこまでだってことになる。向いてないから、今すぐ転専攻したほうがいい」


「なんか、あの時と同じですね」と清原は笑った。


「私たちが初めて出会ったあの時と」


「そうだね、ごめん」


「いえ、いいんです」と清原は言って、立ち上がった。


「私も向いてないんじゃないかなって思い始めてきて。だからもう辞めちゃおうかなって。ほら、私まだ18なんで、今からだったらなんだってできるだろうなって。見限るなら早い方がいいかなって」