全く考えなかったわけではなかった。恋愛というもの。僕には夢がある。壮大な夢がある。その夢を追うのに、恋愛に現を抜かすのは、大城の言うように甘いだろうなと何となく思っていた。夢には常に一途でなければ、叶えることができないと。でも、清原の反論を聞いて、少しだけ意見が傾きつつあるのも事実だ。人を好きなることもできないような夢なら、最初から叶わないのではないだろうか。いや、人を愛するのは本当に大変なことで、片手間でするようなものじゃない。片手間じゃなくて、両方に一生懸命になればいい。どっちも否定できるし、どっちも肯定できる。
「私は、だけど」と鹿波が言った。
「恋愛はしたい。でも、ありきたりな恋愛はしたくないわね」
「ありきたりな恋愛ってどんなのだよ」
「そうねえ、たまたま同じ学校で、たまたま自分の住んでいるアパートの下の階に住んでいたとか、そういうのかしら」
「それ、絶対僕のこと言ってるだろ」
「ともかく。興あるロマンスとでも言うのかしら。例えば私が部屋に出たゴキブリを追いかけて、ヒザの皿を割るとするじゃない? 私はもちろん病院に行くのだけど、その道中で宇宙人にアブダクションされるとする。そこで宇宙人にいろいろ調べられて、改造されて、記憶もしっかり消去して、投棄する。目が覚めた私は、軽井沢の別荘の屋根の上にいて、降りれなくなっているところを別荘の持ち主のお金持ちに助けてもらう。そういう出会いがいいのよ」
「確かに普通じゃないな」と僕は笑った。
「でも、たしかに面白そうだ」



