酷く酔っていた夜だった。
その日は、専門学校の新入生歓迎会があって、僕は会場の居酒屋に着くなり、一人でビールをジョッキで3杯、立て続けに飲んだ。
お酒が入ると僕は饒舌になるタイプらしかった。隣に座った清楚そうな女の子に声をかけた。
「専攻は?」
女の子は、「総合芸術専攻です」と答えた。
「総合芸術? それって何を学ぶの?」
「総合的なこと……でしょうか」
「総合的なこと」と僕はその子の言葉を反芻した。
「つまり、やりたいことがまだないってことか」
「多分そういうことだと思います」
「多分?」
「いえ、あ、はい。やりたいことがないんです。まあ、転専攻できるみたいなので、これからゆっくり考えようかと」
「だったら、専門なんて来ずに、大学行ってたらよかったんじゃない?」
僕は4杯目のジョッキをあおった。
「無理ですよ、大学なんてとても……」
「そんなに頭悪いんだ?」
「はい……恥ずかしながら……」
「へえ、恥ずかしいことだってのはわかるんだ」
その子は何も言わず、唐揚げに箸を伸ばした。唐揚げ専門店くらい1個が大きな唐揚げで、その子は一口かじって、残りを取り皿に置いた。



