鹿波の部屋に戻ると、映画そっちのけで、白熱した議論が交わされていた。いや、議論というよりケンカという方がしっくりくる。とにかく、1組の男女がモメているようだった。
「原因は?」
と冷蔵庫にもたれかかった鹿波に聞いた。
「くだらないわよ」と鹿波はため息をついた。
「お好み焼きのね、生地がまだ若干余っていたの。それを見て坂本が『広島焼きを作ろう』って言いだしたの。そしたら、近藤が『広島焼きって呼び方はないわ』って言って、それで少し言い合いになった。それはそれで収束して、仲良く『広島風お好み焼き』を作ることになったんだけど、坂本が近藤に『お前ってホント雑だよな。こんなに雑な女見たことない』って言いだして、そしたら近藤が『ちょっとそれ何? どういうこと?』って。『そういう雑なところがあるだろ。こないだだってそうだ。洗濯をしようとしたら、お前の脱いだ服はいつも裏返しだ』って。『それは裏返しにした方が汚れも落ちるし、色落ちしないからよ!』って。『じゃあ、俺がゴミ出し任せられて、捨てたゴミ袋が回収されずに返ってきたのは? お前が分別せずに燃えるゴミにスプレー缶を紛れ込ませたからだろ?』って。『それはあなたのヘアスプレーでしょ』って。それで今に至るって感じかしら」
「本当にくだらないな」
「でしょう? 今の言葉、その二人に聞こえるように言ってちょうだい」
「聞こえてるよ!」と近藤が怒鳴った。
「もういいから、ここから出てって!」



