ホリー・ゴライトリーのような女





僕は内心、かなりドキドキしていた。お酒が入っていたせいかもしれない。それは清原も同じで、お酒が入っていたからこういうことを言うんじゃないかと思った。またこのムードがいい。こんなビールの味、絶対に地元にいたままだと味わえなかっただろう。


「そういえば、LINEってやってますか?」


「LINE? ああ、やってるよ」


「私、LINEってあんまりやらないんですけど、交換してくれるならやろうかなって」


「全然、全然」


僕は清原とLINEを交換した。当時はまだLINEは今よりポピュラーじゃなかったし、ガラケーの人も多かった。メアドや電話番号、ウィルコム、mixi、GREEでやりとりするなんてザラにあった。清原の言うように、僕もLINEはあんまりやらなかった。それくらい当時は連絡先の交換、それも異性との交換はハードルの高いもので、特別なもので。学校に行けば繋がれるという関係から、学校以外でも繋がれりたい証のようなものだったような気がする。


「そういえば、どうしてこの学校に?」


「え?」


「私はあの日聞かれましたけど、あなたの理由は聞いてなかったなって思いまして。もちろん、差し支えなければですけど」


「あの日ってゲロの日?」


「そうです、そうです。ゲロの日です」


僕は苦笑いで、ビールを一口飲んだ。


「高校の頃、付き合ってた彼女の家で、1本の映画を観たんだよ。『パレード』って映画で、主演は藤原竜也。あと、貫地谷しほりとか、香里奈とか、小出恵介とか、林遣都なんかも出てた」


「今をときめくオールスターって感じですね」


「そうなんだよ。で、その映画を観てさ、ああ、こういうのっていいなって。より身近に、現実的な感じがして、ドラマなんかとは違うというか、こう、作り物なんだけど、作り物じゃないような気がして。ありそう、こういうの。そうだな……リアリティーってやつなのかな? そのディテールが高くて、濃くて。そういう生活をしたいと思ったし、そういうもの作り物の世界に入りたいって思ったんだ」


「そういえば、髪型もどことなく、藤原竜也さんに似てますね」


「新宿で切ってもらってるんだよ。初めて行った日に、美容師さんに『藤原竜也にしてください』って頼んでさ。僕は藤原竜也になりたいんだよね。のような、じゃなくて、そのものに。でも、俳優になりたいなんか地元の友達には絶対言えないし、でも飛び込みたいって。気が付けば学校の資料請求をしてて、東京に来て、こんな感じ。あの映画に出会わなかったら、きっと地元の大学に入って、教師を目指してる」


「教師志望だったんですか?」


「まあ、今と同じだよ。なれるかどうかはわからないけどね」