ホリー・ゴライトリーのような女





どうやら僕たちは映画を観るそもそもの視点というものが違うようだった。僕はどちらかというと、役者の演技を観がちだ。キャラクターに合っているか、リアリティーはあるか、そういったことを注視している。対する鹿波は作品全体を観て、冷静に分析するタイプだった。脚本はどうか、演出の仕方はどうか、そういったところを注視する。だから、あの後も僕たちは何度か一緒に映画を観たし、鹿波の言うマーク・ウェブの『アメイジング・スパイダーマン』も観た。でも、やっぱり僕はアンドリュー・ガーフィールドやエマ・ストーンに注視していた。エマ・ストーンと言えば、僕の中で『ラ・ラ・ランド』が真っ先に思い浮かぶのだが、その『ラ・ラ・ランド』が上映される4年も前の話だ。


『アメイジング・スパイダーマン』を観た6月は、学校の先生が言っていた「東京の梅雨は、西の方から来た人には堪えられない」という言葉は本当で、ジメジメと鬱陶しい梅雨だった。日当たりの悪いユニットバスは、気を抜くとすぐに黒カビに浸食されたし、それは上の階に住んでいる鹿波の部屋のユニットバスもそうだった。6月にもなると、鹿波には他に友達ができたし、僕にも俳優科で友達ができた。


「今後、制作科の友達と一緒にお好み焼きパーティーをするのだけど、あなたもどうかしら?」


と鹿波に誘われ、僕は俳優科の友達を3人誘った。今考えると3人誘うのでもかなりの人数だったが、その友達がまた他の友達を呼び、鹿波の制作科の友達と合わせると、12人くらいになった。


さすがに鹿波の部屋だけでは狭すぎるため、1階の僕の部屋も解放された。タバコを吸う人間は僕の部屋に集まり、俳優科の大城という、太っていて、裸足で稽古をするために足の裏が汚い友達が持ってきた麻雀牌で麻雀を順番に打った。鹿波の部屋では、ノートPCを開いて、制作科の友達が借りてきたDVDの鑑賞会が行われた。上下で騒がしい夜だった。


鹿波が連れてきた友達の中には、あの夜失礼を働いた総合芸術の女の子もいた。彼女は清原といった。


「私、麻雀もできないですし、映画を観るのも実はあんまり……あの、よかったら外で飲みませんか?」