それから時間が経って、映画を観た。映画は僕の予想を超えるほど面白いものだった。隣で観ていた鹿波は、映画を観ながら口が動いていた。声にならない声で映画の制作の部分を口にしていたんだと思う。
映画館を出ると、すっかり辺りは真っ暗になっていて、駅まで歩きながら鹿波は今日の映画の感想を口にした。
「まあまあね」
「まあまあ?」
「ええ、まあまあ」
「お前、藤原竜也の演技を見てそれか?」
「あなたは随分、藤原竜也に執心しているようね。でもそれは作品の良し悪しを量る絶対的なものじゃないわ」
「演技はどうだっていいってそう言ってるのか?」
「そうじゃないの。藤原竜也が出ているからいい映画なら、映画を撮る時は藤原竜也を出しておけば全部名作だって言ってるのと同じじゃない」
「そうは言ってないよ。僕はただ藤原竜也のあの演技を評価に入れないのはおかしいって言ってるんだ」
「その評価を入れてのまあまあよ」
「わからない」と僕は足を止めた。
「お前、好きな映画って何?」
「『(500)日のサマー』かしら」
「ジョセフ・ゴードン=レヴィットとズーイー・デシャネルか」
「違うわよ、マーク・ウェブよ」



