ホリー・ゴライトリーのような女





鹿波の部屋は、特徴がなかった。


白いこたつテーブルの上に、カフェのカップを模した吸い殻入れが置いてあり、端にはエアコンや室内照明のリモコンが並んでいる。白の骨組みのベッドは、野戦病院を思わせる形で、ピンクの布団カバーにピンクのピローケースの枕。部屋の窓の前には室内用の物干しスタンドがあり、タオルが何枚か干されていた。テレビはない。僕の部屋のように本棚もない。その代わりに小さなゲージがあった。中を覗いてみると、毛で覆われた細長い生き物がいて、体を丸めて眠っていた。


「何、これ」


「フェレットよ」


へえ、これがフェレット。タヌキのようにも見えるし、カワウソのようにも見える。スマホでフェレットについて調べてみると、イタチ科の生き物らしい。眠っていて目は見えなかったが、おそらくクリクリとしたつぶらな目を持っているのだろう。というか、そもそもここってペット飼っていいんだっけ。


キッチンでは餃子を焼く鹿波。白いモフモフとしたパーカーに、ショートパンツという格好だ。足は決して細くはなかったが、色は白く、丁寧に処理されているようだった。僕は鹿波に断ってから、タバコに火をつけた。匂いに気づいたのか、ゲージから物音がして、見るとフェレットが取り付けられた水を一心不乱に飲んでいた。やはり想像した通り、目はクリクリとつぶらで、葬式で使うような数珠玉のように思えた。


「名前は?」


「クズ」


「クズ?」


「本当はクズハって言うの。でも、言いにくいでしょう? クズハ。だから親しみを込めてクズって呼んでるわ」


『クズ』と呼ばれている気の毒なフェレットは、水を飲み終えると、今度はゲージの入り口を小さな両手でガシガシと、開けようとして、無駄な抵抗感があって愛らしかった。しかし、そう思った瞬間、クズは器用に入り口を開けて、ゲージを飛び出した。


「で、出たけど、大丈夫なのか?」


「まあ、大丈夫よ。部屋は閉め切っているのだし。それより、テーブルの下に除菌シートがあるから、テーブルを拭いておいてくれないかしら」


「ああ」と言って、言われた通りテーブルを拭きながら、目ではクズを追っていた。床に脱ぎ散らかされた黄色いパーカーがあって、その袖口に入ったかと思うと、反対の袖口から出てくる。なるほど。こうして見ると、ペットもいいものだと思う。飼っていいのかは知らないが。