ホリー・ゴライトリーが夢見たことは、現実となった。そして奇しくも、今年の夏、日本初となるブルー・ボックス・カフェが銀座店でオープンする。
そんな年になって、改めてホリー・ゴライトリーのような女、鹿波のことを思い出す。どの思い出も、とても現実にあったものだとは思えなくて、こうして読者に語りながらも、うん? 首をかしげてしまう。
鹿波とは、あれっきりだし、あれ以来会いたいとも、今も思わない。
会わない方がいい。ぶっちゃけ会いたくない。
でも、もし会う機会があったなら、その時に第一声でかける言葉はもう決まっている。それを聞いて鹿波はどんな反応をするだろうか。決まってる。クールに、ドライに、我関せず。想像するだけで思わず笑ってしまう。でも、それがホリー・ゴライトリーのような女、鹿波という女なのだ。
ハッピーエンドにしたかったわけではない。バッドエンドだとも思っていない。でも、現実はいつだってそうだ。したい方に向かうわけではないし、そういう風に思い通りに進むことだってある。きっとどこかに決められたレールみたいなものがあって、先は見えないけれど、決まっている。そういう積み重ねが、軌跡となっていくんじゃないだろうか。なんて面白い。
この先も、僕は時々思い出すはずだ。そして、大事な人の横でそんな時がやってきて、思わず笑ってしまって、「何笑ってんの? キモッ……」とひかれてしまうことだろう。現に僕はここまで語りながら、何度ほくそ笑んだかわからない。後になってそういう風に笑える出来事を、これから先も積み重ねられたら、なんていい人生なんだろうと思う。
なんて、面白いものなんだろうか、人生。



