「……離して」と鹿波が急に動きを止めて言った。
「離して!」
僕はとんでもなく大きな声でそう言った鹿波に驚き、反射的に手を離していた。振り返った鹿波は、僕の目の前で思いっきり反動をつけて、僕の左頬を叩いた。
「……!?」
呆気にとられた僕がビンタの後に目にしたのは、鹿波の泣き顔だった。大粒の涙で顔はぐしゃぐしゃになっていて、メイクが剥がれ落ちていた。
「心配したのよ! あなたが死んでたらって……連絡くらい寄越せばいいじゃない! どうして無断で学校を休むのよ! どうしてカーテンを閉め切ったこんな暗い部屋にいるのよ! バカじゃないの! 私、あなたが死んでたらって思うと、居ても立っても居られなくて、講義を抜けてきたのよ? 途中、コンビニに寄って、強めのお酒を飲んで、万が一の時に少しは冷静にいられるようにって、最悪の現実を受け入れられるようにって。ここまでしてる私の気持ちがわからないの? もう! なんで? なんでわかってくれないの! あなたって私のことを一度でもちゃんと見ようとしたことがある? いつも他人に対して興味なさそうで、達観して、キザで、挙句勝手に死のうとして。あなたが死んだら、私、壊れちゃうじゃない! ねえ、この意味! この意味わかって聞いてるの!?」
「わからないよ」
「好きだ、バカって感じなの!」



