続・おいしいものシルブプレ!! - l'année prochaine -

「むかしむかし」
「もしもし?」
「うちのおじいちゃんとおばあちゃんが」
「おじいちゃん、おばあちゃん」
「ベトナムから船で海を渡りました」
「海!!」
「着いたところは南米の、」
「何やってるんですか?」

お昼休憩から帰ったら、イートインスペースの前で、金髪さんと後輩くんが真剣な顔で話をしていた。
「世間話です」
「なんで英語でしないんですか?」
「あっ」

後輩くんいわく、日本でずっと日本語を使っていると、英語を忘れてしまうそうです。
(ん? アメリカの話は?)

「結論から言うと、うちのばあちゃんは異常なかった」
「良かったですね」
(本当に日本語上手いなコイツ)
遅れてきた茶髪は、冷たい無糖の紅茶のペットボトル2本とミネラルウォーターの2000ミリリットルのボトル、それにサワークリーム味のポテトチップの袋と、糖質制限のミニようかんの袋をカゴに入れてレジに来た。
「日本の医療は素晴らしいな。すぐ診てすぐ検査してくれる」
「病院は怖い」
「ただ、ばあちゃんも年だからな。いろいろ気をつけないと」
「おばあちゃん大切です」
やたらと日本語が上手い茶髪の言葉に、金髪さんが言葉をはさむ。正直可愛いし面白い。

「お客様方どこ住みですか?」
「オーストラリア。父親はアイルランド系、母親はフランスとイギリスにルーツがある」
「スイス人です」
「ちょっと待って。日本は?」
後輩くんの質問に茶髪と金髪さんが気さくに答える。何か引っかかる点が。
「うちの父親は養子だ。そんで俺も養子」
「!!」

「ちょっと邪魔よ。あなたたち。いつまでしゃべってるの?」
機嫌が悪そうな痩せたおばさんが茶髪の後ろにいた。あっ、お客様!!
「申し訳ありませんマダム。気がつきませんでした。こんなにお美しいのに」
「ごめんなさい」
「あら……」
(ん!?)