町中の梅が散りはじめた。はかないな、春って。
「さよなら、します」
入ってきた時からそんな気がしていた。茶髪は無表情で、金髪さんは肩を落としていた。
「スイス帰ります」
ペットボトル飲料の品出しをしていた私に、金髪さんはピスタチオ色の両目から大粒の涙をポロポロこぼしながら、かよわい声で言った。
(悲しい。でも、綺麗だ)
「そうですか。
私ももうすぐここを辞めるんです」
「!?
ここ辞めます?」
「えぇ、大学の方が忙しくて」
「大学忙しい」
なぜだろう。私も泣けてきちゃったよ。春のせいかな。
「おまえの連絡先を教えろ」
茶髪がスマートフォンをデニムのポケットから出す。ついでに白いハンカチも出して、私の頬をすっと拭ってくれた。
「私、あなたにメッセージします!!」
「え?」
「いっぱいいっぱいメッセージします!!」
金髪さんが、涙をだらだらこぼしながら、それでも一生懸命そう言ってくれる。嬉しい。嬉しすぎて、もっと泣けてくる。
「俺も」
「僕も」
「後輩くんも!?」
えっえっ、あ、あ、うん!! 嬉しい!!
「ありがとう……」
私がなんとか笑顔を作ったら、金髪さんが泣き笑いしながら大きな声で言った。
「あなたが大好きです!!」
(あ)
私の春、これからかも。
「俺も」
「僕も」
「は!?」
茶髪と後輩くんが次々と言った言葉を聞いて、私はポカンとする。あ、あー、好きっていろいろあるよね。
「おまえはガキだが悪くない」
「先輩、アメリカにお嫁に来ませんか?」
「え……」
え? え?
(ええええええええええええええええええええ!!)
「あなたに私の国、スイス、見たいです!!」
金髪さんがニコニコしながらそう言った。まだ涙をポロポロこぼしながら。
(綺麗だ)
ちょっと文法を間違えているけれど、
(綺麗だ)
私に春を運んでくれるひと。
遠い遠い国からやってきた。
「Ciao」
そう言って軽やかな足取りで、金髪さんと茶髪は外へ出ていった。まだこぼれる白梅。美しいはなむけ。
(また、会えますように)
「あ、
茶髪にハンカチ返すの忘れた」
「せんぱーい。
僕とルクセンブルク行きませんか? ヨーロッパ」
「る、ルクセン、」
「今、狙い目みたいですよ、そこ。
ワーキングホリデー」
また、会えますように。
- 次の日 -
「さよなら、します」
入ってきた時からそんな気がしていた。茶髪は無表情で、金髪さんは肩を落としていた。
「スイス帰ります」
ペットボトル飲料の品出しをしていた私に、金髪さんはピスタチオ色の両目から大粒の涙をポロポロこぼしながら、かよわい声で言った。
(悲しい。でも、綺麗だ)
「そうですか。
私ももうすぐここを辞めるんです」
「!?
ここ辞めます?」
「えぇ、大学の方が忙しくて」
「大学忙しい」
なぜだろう。私も泣けてきちゃったよ。春のせいかな。
「おまえの連絡先を教えろ」
茶髪がスマートフォンをデニムのポケットから出す。ついでに白いハンカチも出して、私の頬をすっと拭ってくれた。
「私、あなたにメッセージします!!」
「え?」
「いっぱいいっぱいメッセージします!!」
金髪さんが、涙をだらだらこぼしながら、それでも一生懸命そう言ってくれる。嬉しい。嬉しすぎて、もっと泣けてくる。
「俺も」
「僕も」
「後輩くんも!?」
えっえっ、あ、あ、うん!! 嬉しい!!
「ありがとう……」
私がなんとか笑顔を作ったら、金髪さんが泣き笑いしながら大きな声で言った。
「あなたが大好きです!!」
(あ)
私の春、これからかも。
「俺も」
「僕も」
「は!?」
茶髪と後輩くんが次々と言った言葉を聞いて、私はポカンとする。あ、あー、好きっていろいろあるよね。
「おまえはガキだが悪くない」
「先輩、アメリカにお嫁に来ませんか?」
「え……」
え? え?
(ええええええええええええええええええええ!!)
「あなたに私の国、スイス、見たいです!!」
金髪さんがニコニコしながらそう言った。まだ涙をポロポロこぼしながら。
(綺麗だ)
ちょっと文法を間違えているけれど、
(綺麗だ)
私に春を運んでくれるひと。
遠い遠い国からやってきた。
「Ciao」
そう言って軽やかな足取りで、金髪さんと茶髪は外へ出ていった。まだこぼれる白梅。美しいはなむけ。
(また、会えますように)
「あ、
茶髪にハンカチ返すの忘れた」
「せんぱーい。
僕とルクセンブルク行きませんか? ヨーロッパ」
「る、ルクセン、」
「今、狙い目みたいですよ、そこ。
ワーキングホリデー」
また、会えますように。
- 次の日 -



