春。町中の梅が満開。
私は大学3年生になり、就職活動が早くも始まり、卒業論文の気配も感じつつ、
まだ同じコンビニで働いています。
「こにちわ!!
Bonjour!!」
そのひとは、
春のにおいと冷気をまとって、またうちのコンビニへやってきた。
迫力のある大柄なイケメンを連れて。
「Hm...」
そのひとがお菓子のコーナーでスナック菓子を棚に出していた私の顔を見るなりパアアアアッと明るい顔をし、それからチラッととなりのイケメンを見る。
「お会いできました」
「そ、そうですね」
「嬉しいです!!」
「私も!!」
「……」
「……」
ふわふわくるくるの金髪。キラキラの目はピスタチオの実のような色をしてくりくりだ。長身で細身。
(また白い梅の花びらたくさんついてる……)
アイドルでも、こんなきれいなひと見たことない!!
(推し変しそう)
「お会いできました!!」
「そ、そ、そうですね」
「嬉しいです!!」
「わ、わ、私も……」
そのひとが、またとなりのイケメンをチラッと見た。大柄でやはり長身のそのイケメンは、柔らかそうな茶色の髪を短くしていて、
瞳が、澄んだ青いサファイアみたいだ。二重でつり目。肌が抜けるように白い。
(わ、私も、この1年の成果を見せなきゃ!!)
私もこの1年ぼうっとしていたわけじゃないんだ!! わざわざ学部を越境してフランス語を話せる友だちをつかまえて特訓したんだから!!
「ぼ、ぼんじゅー、
え、えーと、えーと……」
「Holy Sh't」
茶髪のイケメンが低くそうつぶやいた。あきれたような顔で。何言ったのか、そもそも何語かわからないけれど、
おまえ今明らかに悪口言っただろ!! そう言うのすぐ伝わるんだからな!!
「Hey, We've come here for having cold tea you recommended, right?」
(おい、俺たちはここにアイスティーを買いに来たんだろ? おまえが勧めた)
「ハイ!!」
「I won't believe in your words. We cannot find a good one. Never.
Because cold tea isn't good, I'm sure」
(俺は信じねぇぞ。アイスティーのうまいのなんか見つかるかよ)
「Si」
(見つかるよぉ)
茶髪イケメンはなぜか不機嫌そうだが、金髪さんはニコニコしている。何が起こったのかわからないけれど、もめごとの気配を察知 -
「済みません。助けてください」
私がそっとバックヤードへ行くと、休憩中で甘いミルクコーヒーを飲んでいた後輩が、「何かありましたか?」と聞いてくる。かなりなまりは強いけれど流ちょうな日本語だ。
「お客様、ご用件をお伺いします」
後輩くんは流ちょうな日本語のまま、にこやかにお客様ふたりに話しかける。短い黒髪で黒いつり目のアジア系イケメン。柔らかい雰囲気の細身マッチョ長身の好青年。昨年、アメリカから日本の大学に留学してきた。
金髪イケメンがチラッととなりの茶髪イケメンを見る。私、今、長身のイケメンに囲まれてるぞ(包囲されているとも言う)。
「We're looking for a bottle of cold tea」
(アイスティーのボトルを探してる)
茶髪イケメンがさらに不機嫌そうな顔をしてそっけなくそう言った。金髪さんはますますニコニコしはじめた。
「こちらです」
ん? なんだなんだ? 私も着いていくぞ。イケメンタワーのあとに。
と、
いちばん奥のペットボトル飲料や缶飲料があるコーナーに案内された。
「こちらから加糖のストレートティー、加糖のミルクティー、加糖のロイヤルミルクティー、加糖のピーチティー、加糖のオレンジティーソーダ、」
「What?」
「わからない」
私が聞いても暗号文みたいだなって思うから、海外から来たひとにはますますわからないだろうし、金髪さんははっきりわからないって言ってるし。
「済みません。通訳していただきたくて呼んだんですけど」
「あ、そうですか。早く言ってくださいよ」
(察して!! 無理かもしれないけど、状況を見て察して!!)
「これ紅茶。甘いよ。これはミルクティー」
「俳句か?」
「先輩、これは川柳です。季語が入っていませんので」
「英語で通訳していただけませんか?」
「あ、そうですか。早く言ってくださいね」
(ああああああああああああ!!)
マイペース過ぎだろ!! ねぇ、みんなマイペース過ぎ!!
と、
金髪さんが無糖のストレートティーのボトルを1本取り、茶髪のイケメンに差し出す。
「だいじょうぶ」
「何が?」
金髪さんが茶髪のイケメンにニコニコ笑顔でそう言ったので、私は思わず即座に突っ込んでしまう。
「大丈夫!!」
「ねぇ、何が!?」
つられたのか後輩くんが金髪さんと同じことを言ったので、私はそっちにも突っ込む。私、ボケもツッコミも専門外です!!
お客様方はその無糖のストレートティーと紙コップをお買い上げになりました。えぇ? 本当に大丈夫?
私は大学3年生になり、就職活動が早くも始まり、卒業論文の気配も感じつつ、
まだ同じコンビニで働いています。
「こにちわ!!
Bonjour!!」
そのひとは、
春のにおいと冷気をまとって、またうちのコンビニへやってきた。
迫力のある大柄なイケメンを連れて。
「Hm...」
そのひとがお菓子のコーナーでスナック菓子を棚に出していた私の顔を見るなりパアアアアッと明るい顔をし、それからチラッととなりのイケメンを見る。
「お会いできました」
「そ、そうですね」
「嬉しいです!!」
「私も!!」
「……」
「……」
ふわふわくるくるの金髪。キラキラの目はピスタチオの実のような色をしてくりくりだ。長身で細身。
(また白い梅の花びらたくさんついてる……)
アイドルでも、こんなきれいなひと見たことない!!
(推し変しそう)
「お会いできました!!」
「そ、そ、そうですね」
「嬉しいです!!」
「わ、わ、私も……」
そのひとが、またとなりのイケメンをチラッと見た。大柄でやはり長身のそのイケメンは、柔らかそうな茶色の髪を短くしていて、
瞳が、澄んだ青いサファイアみたいだ。二重でつり目。肌が抜けるように白い。
(わ、私も、この1年の成果を見せなきゃ!!)
私もこの1年ぼうっとしていたわけじゃないんだ!! わざわざ学部を越境してフランス語を話せる友だちをつかまえて特訓したんだから!!
「ぼ、ぼんじゅー、
え、えーと、えーと……」
「Holy Sh't」
茶髪のイケメンが低くそうつぶやいた。あきれたような顔で。何言ったのか、そもそも何語かわからないけれど、
おまえ今明らかに悪口言っただろ!! そう言うのすぐ伝わるんだからな!!
「Hey, We've come here for having cold tea you recommended, right?」
(おい、俺たちはここにアイスティーを買いに来たんだろ? おまえが勧めた)
「ハイ!!」
「I won't believe in your words. We cannot find a good one. Never.
Because cold tea isn't good, I'm sure」
(俺は信じねぇぞ。アイスティーのうまいのなんか見つかるかよ)
「Si」
(見つかるよぉ)
茶髪イケメンはなぜか不機嫌そうだが、金髪さんはニコニコしている。何が起こったのかわからないけれど、もめごとの気配を察知 -
「済みません。助けてください」
私がそっとバックヤードへ行くと、休憩中で甘いミルクコーヒーを飲んでいた後輩が、「何かありましたか?」と聞いてくる。かなりなまりは強いけれど流ちょうな日本語だ。
「お客様、ご用件をお伺いします」
後輩くんは流ちょうな日本語のまま、にこやかにお客様ふたりに話しかける。短い黒髪で黒いつり目のアジア系イケメン。柔らかい雰囲気の細身マッチョ長身の好青年。昨年、アメリカから日本の大学に留学してきた。
金髪イケメンがチラッととなりの茶髪イケメンを見る。私、今、長身のイケメンに囲まれてるぞ(包囲されているとも言う)。
「We're looking for a bottle of cold tea」
(アイスティーのボトルを探してる)
茶髪イケメンがさらに不機嫌そうな顔をしてそっけなくそう言った。金髪さんはますますニコニコしはじめた。
「こちらです」
ん? なんだなんだ? 私も着いていくぞ。イケメンタワーのあとに。
と、
いちばん奥のペットボトル飲料や缶飲料があるコーナーに案内された。
「こちらから加糖のストレートティー、加糖のミルクティー、加糖のロイヤルミルクティー、加糖のピーチティー、加糖のオレンジティーソーダ、」
「What?」
「わからない」
私が聞いても暗号文みたいだなって思うから、海外から来たひとにはますますわからないだろうし、金髪さんははっきりわからないって言ってるし。
「済みません。通訳していただきたくて呼んだんですけど」
「あ、そうですか。早く言ってくださいよ」
(察して!! 無理かもしれないけど、状況を見て察して!!)
「これ紅茶。甘いよ。これはミルクティー」
「俳句か?」
「先輩、これは川柳です。季語が入っていませんので」
「英語で通訳していただけませんか?」
「あ、そうですか。早く言ってくださいね」
(ああああああああああああ!!)
マイペース過ぎだろ!! ねぇ、みんなマイペース過ぎ!!
と、
金髪さんが無糖のストレートティーのボトルを1本取り、茶髪のイケメンに差し出す。
「だいじょうぶ」
「何が?」
金髪さんが茶髪のイケメンにニコニコ笑顔でそう言ったので、私は思わず即座に突っ込んでしまう。
「大丈夫!!」
「ねぇ、何が!?」
つられたのか後輩くんが金髪さんと同じことを言ったので、私はそっちにも突っ込む。私、ボケもツッコミも専門外です!!
お客様方はその無糖のストレートティーと紙コップをお買い上げになりました。えぇ? 本当に大丈夫?



