いきなりの事で咄嗟に手を離そうとするが、しっかりと握られていて抜け出すことはできなかった。どうやらナギくんは熱で意識が朦朧としているようで、虚ろな目で話し続けた。
「アサちゃんが看病してくれるなんて夢みたい……あぁ、夢なのかな……」
「ゆ、夢じゃないよ。」
「本当?たしかに、アサちゃんの手、冷たくて気持ちいいな……」
更に強い力で手を握られ、とうとう私の手は自由をなくした。でも、なんだか弱っているナギくんを見ると放っておけなくて、私もそれ以上抵抗はしなかった。
いくら高校生とはいえ、ナギくんがこんな状態なのにも関わらずご両親は仕事に行っているのだろうか。さっきの話ぶりを聞くに、今までもこうして1人で耐えてきたのだろう。
今よりもずっと小さい体で一人苦しみに耐える彼が脳裏に浮かび、心が締め付けられる。
「ねぇ、アサちゃん、お願い。僕が寝るまででいいから、そばにいて欲しいな。1人で居ることには慣れてるはずなのに、今アサちゃんがいなくなったら死んじゃいそう…ゴホッゴホ」
「わ、わかったよ!とりあえず寝よう?私そばにいるから。」
私がそう言うとナギくんは少しほっとしたような顔をしたが、手の力はそのままでゆっくりと目を閉じた。
よほど症状が酷いのか、すぐに眠りについたようで静かな寝息を立てている。その様子を見ているとなんだか私もウトウトしてきて、いつの間にか眠ってしまっていた____
