「すごい……綺麗だね。」

「…………ん?何か言った?」

「花火がすごく綺麗!」

「聞こえない!」

「き!れ!い!」

「あぁ、綺麗だね。」


花火の音が大きくて、中々声が通らない。
これはしばらく会話はできなさそうだと判断し、花火を見るのに集中しようとした時、お兄ちゃんの口が動いた。


「_______ 」


言葉を発した瞬間、今日1番大きな花火が打ち上がった。


それが最後だったのかそれ以降花火は続かず、残ったのは群衆の話し声だけだった。


「ねぇ、最後なんて言ったの?聞こえなかったよ。」

「……うん?」

「誤魔化さないで!最後何か言ってたでしょ?ちゃんと見てたんだから。」

「あぁ………懐かしいなって言ったんだ。」


お兄ちゃんはそう言うと、すぐに立ち上がった。


「ほら、もう帰ろう。あんまり遅くなると母さんたちが心配する。」


それ以上は何も言わず、歩き始めた。
さっきの言葉は本当だったのだろうか。もし違ったとしても私に確かめる術はない。
私も詮索はせず、黙って兄について行く。


今夜の空は花火を引き立たせるかのように星1つなかった。